永久歯の矯正治療に最も一般的に使用される装置です。すべての歯にブラケットを接着し、ブラケットにワイヤーを通して、正確な歯の移動をおこない、理想的な歯並び・噛み合わせにすることが可能です。
乳歯がぬけてほとんどの永久歯が生えそろう小5〜中学生以降に開始され、1年6ヶ月〜2年6ヶ月以上治療をおこないます。ブラケットやワイヤーには、さまざまな商品やシステムがありますが、どの商品やシステムでも基本的な構造に違いはありません。大切なのはワイヤーを調整する矯正歯科医の技術と経験です。
ブラケット装置は歯を傷つけることなく装着されます。歯に接着するための接着剤は日本で初めて開発され1971年にはオルソマイトという商品名で発売されました。現在は光重合レジンという接着剤を使用しています。ブラケットの裏面に粘度の高い接着剤をつけて歯に押し当て、専用の光を当てると硬化し、歯に強固に接着されます。
マルチブラケットの調整は月に1回くらい行われます。最初は細くて柔らかい形状記憶合金のアーチワイヤーを装着しますが、徐々に硬いステンレススチールへと交換していきます。歯の移動にはパワーチェーンや顎間ゴムなどの補助具を使用します。またループワイヤーやユーティリティアーチなどの、弾性の強いワイヤーを使用して、前歯を後退させたりします。最終段階は、柔らかいベータチタンワイヤーやゴムメタルワイヤーに変更して、緊密に噛み合うように微調整を行います。
きれいな歯並びが完成したあとは、ブラケットを歯からきれいに取り外します。元通りのきれいな歯が現れ、美しい歯並びに生まれ変わります。
後戻り防止のため、とりはずし式の保定装置(リテーナー)に変更して約2年間メインテナンスを行います。最初に10ヶ月は20時間/日使用し、残りの14ヶ月は夜間就寝時のみの使用をします。
ワイヤー矯正(マルチブラケット装置)の歴史
考古学者は紀元前のエジプトのミイラから、歯科矯正学の始まりを示す歯列矯正器具に似たものを発見しました。考古学者は歯を移動させるための装置だと考えています。
「近代歯科学の父」と呼ばれたフランスの医師ピエール フォシャール(Pierre Fauchard)は、 1723 年にバンドー(Bandeau)と呼ばれる器具を発明しました。これは、歯を矯正するために使用された最初の近代的な矯正装置であると考えられています。しかし当時は噛み合わせについてはほとんど考慮されず、見た目を治すだけの治療でした。装置は上の歯にのみ装着され、治療は非常に高価だったので、裕福な人々に限られていました。
近代歯科矯正学の父とも呼ばれるエドワード・H・アングル(Edward Hartley Angle)は、現代でも使われている不正咬合のAngle分類を提案し、1880年から歯科矯正装置をいくつも開発しました。 1928年には今日世界中で使用されているエッジワイズ装置というマルチブラケット装置をつくりました。ブラケットには0.022 x 0.028インチ(0.5 x 0.7mm)の溝が切ってあり、そこに直径0.3mm〜0.6mmほどのワイヤーを固定して歯に力をかけて移動します。
アングルは1930年に死去したため、その後弟子のひとりであるTweedによって治療法が確立されました。またTweedは抜歯・非抜歯の治療の比較をおこない、非抜歯では調和のとれた顔貌を確立するのがむずかしいとの見解を発表しました。(抜歯・非抜歯論争)
1960年代には、ベッグ(Raymond Begg)や、ジャラバック(Joseph R. Jarabak)らが、ライトワイヤーテクニックという弱い力で歯を動かす方法を提案しました。日本に本格的にマルチブラケット装置が導入されたのはこのころでした。
1970年代は技術革新の時代で、1971年にダイレクトボンドという歯に直接ブラケットを接着する方法が日本で開発されました。透明なクリアブラケットが開発されたのも1970年代です。クルツ(Craven Kurz)は、1975年に歯の裏側に装着する舌側矯正装置を開発しました。1976年にアンドリュース(Lawrence F. Andrews)は、歯の情報をブラケットに組み込むストレートワイヤー法を発表しました。1978年にはヘイソン (G. Herbert Hanson)によって結紮(けっさつ)が不要なスピードブラケットが世に出ました。1979 年にはアンドレーセン(George F. Andreasen)が形状記憶合金のアーチワイヤーを歯列矯正に応用し始めました。
映画「カサブランカ」と矯正治療
戦時下のフランスとモロッコを舞台にした1942年のアメリカ映画「カサブランカ」では、パリで恋に落ちて別れた男女が、フランス植民地だったカサブランカで思いがけず出会い、再び恋に落ちる様子を描いています。
ハンフリー・ボガートが演じるリックが、イングリッド・バーグマンが演じるイルザと、戦時下のパリで会話をするシーンがあります。
リック:10年前に君は何をしていた?
(Where were you, ten years ago?)
イルザ:10年前?そうねぇ、歯にブレースをつけていたわ。
(Ten years ago? Let’s see…
Yes, I was having a brace put on my teeth.)
イルザ:あなたは?
(Where were you?)
リック:職を探していた
(Looking for a job.)
アメリカではワイヤー矯正のことをブレース(Brace)と呼び、「歯にブレースをつけていた」とは、歯列矯正をしていたという意味になります。イルサを演じた女優イングリッド・バークマンは
1915 年生まれで撮影時は 27
歳でした。1940年代のアメリカ映画でこのようなセリフがあるということは、アメリカではいかに古くから歯列矯正が一般的であったかを物語っています。一方、戦前の日本では歯科矯正学を学んだ歯科医は数えるほどしかいなかったため、歯列矯正はほとんど知られていませんでした。
バーグマンはスウェーデン人で、1935年から映画女優として活動し始めました。スウェーデンにはビョルク(Arne
Björk)という著名な矯正歯科医がいましたので、バーグマンももしかしたら歯列矯正をしていたのかもしれません。
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抜歯・非抜歯など選択肢の多い治療計画
治療計画には、アウトカムシミュレーションとドルフィン分析システムのVTOを使用しています。初診相談や診断の際にいくつかのプランをご提案いたします。E-line を改善して、口元を下げることを希望される方には、永久歯を抜歯する治療法が適している可能性があります。しかしケースによっては口元を下げる治療ですが非抜歯の方が適している場合もあります。口元を下げる必要がない人や、できるだけ非抜歯を希望される方には、GMD、拡大装置などでおこなう非抜歯治療を検討します。
抜歯と非抜歯どちらのプランも作成し、それぞれのメリットデメリットをご説明して、どのようなプランがベストなのか、ご相談し最終決定いたします。
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ライフイベントにあわせる矯正治療
治療期間はできるだけ2年6ヶ月以内を目標にしています。転居や留学を控えた患者様には、通院間隔を短くするなどで治療を早め、転居や留学前に矯正治療を終えられるように配慮します。
また結婚式や成人式に合わせて矯正治療を終了できるように、できるだけ治療を速めることを検討します。どうしても治療が終了できないときは一時的にワイヤー装置を外すことも可能です。(別途除去と再装着の費用がかかります)
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細部へのこだわり
ワイヤー矯正は微調整において、マウスピース型矯正装置(インビザライン)より優れている場合が多いです。とくに前歯の微調整(デテイリング)については、装置を外す直前の最終段階で細かいご希望を聞いて調整しています。当院は処置料がないので患者様が納得いくまでリクエストをしていただくことが可能です。
ワイヤー矯正では、歯をできるだけ平行になるように並べることも重要です。治療の途中でパノラマレントゲンを撮影し、平行であることを確認しています。
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むし歯にならないための配慮
ワイヤー矯正(マルチブラケット)の患者様には、当院で選択したブラッシングキットを治療開始時にお渡ししています。また治療開始前に歯の染め出しをして、10分ほど診療室内の歯磨きコーナーでブラッシングをすることをお勧めしています。月1回の染め出しとブラッシングで、見違えるようにブラッシングが上達します。
またブラケットによるむし歯が心配な方には、歯面のコーティングをしてむし歯を予防するビスカバーの塗布をおこなっています。(別途費用がかかります)
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標準で目立たないブラケットを使用します
標準で前歯上前歯4本、下前歯4本は目立たないクリアブラケットを使用しています。金属のブラケット装置は奥歯のみの使用になります。
またセルフライゲーティングブラケットやモジュールを使用して、ワイヤーをブラケットに結びつけており、細い金属ワイヤーによる結紮(けっさつ)がほとんどない治療をおこなっています。
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力の弱いワイヤーからの歯の移動を心がけています
非常に細い直径0.010インチのニッケルチタンワイヤーからの治療開始します。従来の0.014〜0.016インチのニッケルチタンワイヤーから始める治療に比べて、弱い力で矯正治療を開始しているのが特徴です。
矯正歯科医が苦労するバイトオープンは、リケッツ(Robert M. Ricketts)が開発したバイオプログレッシブ治療法のユーティリティーアーチを使用することで、確実にバイトオープンが可能です。また1990年代よりアンドリュース(Lawrence F. Andrews)が考案したプリアジャステッドブラケットを使用しています。ワイヤーの調整が少なく効率的に歯の移動が可能です。
また当院は標準でナンスホールディングアーチとエラスティックを歯の固定源として使用しており、追加費用がかかる歯科矯正用アンカースクリューは、患者様が有益と判断した場合のみ使用しております。
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難症例にも対応
他では外科矯正の適用といわれたケースを、デンタルコンペンセーションを利用して通常の矯正のみで治療するなども可能です。
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できるだけむし歯を抜歯し、ときには親知らずを歯並びに使います
6歳臼歯(第1大臼歯)はむし歯になりやすい歯ですが、むし歯大きくその歯の寿命が短いと推定される場合は、6歳臼歯(第1大臼歯)を抜歯して、親知らずを前方に移動して空隙を閉鎖することもおこなっています。
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歯の本数が少ないケースではすき間をできるだけ閉鎖します
むし歯ですでに歯を抜歯していたり、先天欠如(生まれつき歯の本数が少ない)がある場合には、できるだけその空隙を閉じるようにします。
空隙を残して矯正治療を終える場合は、その部分にデンタルインプラントや、ブリッジなどの一般歯科治療が必要になりますが、その処置が不要になり、歯全体の寿命が長くなります。 -
歯の移植にも対応します
移植とは、失われた歯を別の歯に置き換える方法です。先天的に永久歯が欠損している場合や、むし歯などで抜歯の必要があり、矯正治療のために健康な歯を抜く必要がある場合には移植ができないか検討します。インプラントや入れ歯と違い、自分の歯なので体に優しく、条件が揃えば非常に有効な方法です。
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金属アレルギー対応のワイヤー矯正も可能です
金属アレルギーの方にはセラミックやチタン製のブラケットを使用し、βチタンワイヤーを使用することで、アレルギーの発生を防ぎながら治療をおこなっています。
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めだたない保定装置(リテーナー)
目立たないクリアリテーナーを基本としています。透明なプラスティクの保定装置で歯を完全に覆うので、後戻りが少ないのも利点です。以前はベッグリテーナーを使用していましたが、ときに小臼歯の落ち込みなどを経験することがありました。クリアリテーナーを使用してからはそのような後戻りは全くなくなりました。装置が薄く、装着感がよいのも特徴です。
破損しやすいのが欠点ですが、2年間のメインテナンス契約期間は破損しても追加費用なしで作り直しが可能です。
また、長期間保定を希望される方は、舌側のワイヤー固定などをおこなうことも可能です。 -
転居にともなう転医にも対応
当院が所属する「日本臨床矯正歯科医会」は、国内で唯一、全国への転医に対応できる矯正歯科の団体です。矯正治療中に患者様が転居された場合でも、各地の矯正歯科医院への継続治療が可能です。転医にかかる費用などもできるだけ追加費用がかからないように配慮いたします。
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後戻りの場合は再治療が可能です。
ワイヤー矯正の後戻りは適切に保定装置(リテーナー)使用することでほとんどの場合は防ぐことができます。しかし、万一後戻りした場合は再治療も可能です。再治療の費用は、後戻りの原因、保定装置(リテーナー)の使用状況、時期などを考慮してご提案させていただきます。軽度であれば、多くの場合は再治療は 6 ~ 12 か月以内に完了する場合が多いです。
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メタルブラケット
一般的にステンレススチールで作られ、接着剤を使用して歯に取り付けられます。シリコン製の透明なモジュールや、直径約0.2mmの細い金属ワイヤーでブラケットに結紮(けっさつ)します。治療が進むにつれてより太いワイヤーに交換していきます。当院では奥歯にのみメタルブラケットを使用しています。
クリアブラケット
歯の色に近いセラミックやプラスティックで作られています。目立たない外観は患者様にとって魅力的です。治療に関して何か制限があるわけではなく、メタルブラケットと同じ機能を持ちます。当院では前歯には標準でクリアブラケットを使用しています。
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セルフ・ライゲーティング・ブラケット
シャッター構造がブラケットに組み込まれているセルフ・ライゲーティング・ブラケットも使用しています。結紮(けっさつ)が不要で、ワイヤーを直接ブラケットに固定することができます。
ワイヤーに対する摩擦が少なく、歯が自由にスライド移動できるローフリクション(低摩擦)がメリットです。またワイヤーの交換にかかる時間が短縮されます。ワイヤーを結ぶためのシリコンが使用されないため、食物が染み込むことがなく衛生的です。
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リンガルブラケット
歯の裏側(舌側)に矯正装置を付けるリンガルブラケットは、外からは見えません。初期の一時的な発音障害、舌の痛み、ブラッシングのしにくさなどが欠点ですが、マウスピース型矯正装置(インビザライン)よりも目立たない治療が可能になります。費用を抑えた上あごのみ歯の裏側(舌側)に矯正装置付けるリンガルブラケットで治療することも可能です。
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従来のメタルワイヤー
ステンレススチール、形状記憶合金のニッケルチタンワイヤー、βチタンワイヤー、ゴムメタルワイヤーなどを使用します。硬さ、弾性、太さ、断面が丸か角かなどの違いがあり、調整のたびに最適なワイヤーを選択しています。種類によって見た目の色は若干異なりますが、色は金属色でどれも違いはありません。
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ホワイトコーティングワイヤー
ホワイトコーティングワイヤーはフッ素樹脂などのプラスティック系のコーティングや、ロジウムという金属のコーティングを施したアーチワイヤーです。歯の色に近いため、ワイヤーが目立ちにくいのが特徴です。
とくにロジウムコーティングは途中で剥がれたり食物の色素で汚れたりすることが少ないため、耐久性の高いコーティングです。ワイヤーの特性も従来のワイヤーに非常に近いです。
ワイヤー矯正の構造
付加装置
上顎拡大装置(スリムスケルトン拡大装置)
上顎拡大装置は、上あごの歯並びを広げることにより、多くのスペースを作ることが可能です。当院で使用している装置は、スリムスケルトン拡大装置や、スリムエクスパンダーといって、口蓋部のワイヤーが補足、従来のスケルトン拡大装置に比べて違和感や発音障害がとくに少ないタイプです。
次のような症状で上顎拡大装置を使います。
交叉咬合
通常下の歯は上の歯の内側にありますが、それが反対になっている状態を改善します。
叢生(でこぼこ)
上あごを広げることで抜歯をせずに必要なスペースを作ることができます。
埋伏歯
まだ生えていない歯が他の歯によってふさがれている場合、上あごを広げることで、自力で生える可能性が高まります。
ナンスホールディングアーチ
ナンスホールディングアーチは、大臼歯が前方に移動するのを防ぎます。
小臼歯を抜歯して矯正治療する場合に使うことがあります。違和感が大きい装置ではないので数日で慣れます。最初は発音がおかしく聞こえることがありますが、舌が新しい装置に慣れるようになり、普通の発音に戻ります。抜歯治療では犬歯の移動が終わるとナンスホールディングアーチは除去するタイミングになります。6ヶ月〜1年6ヶ月前後で外す場合が多いです。
エラスティック(顎間ゴム)
ワイヤー矯正を開始して3~6 か月後に行います。歯を適切な位置に移動するために必要な力を発揮し、一部の患者様にとっては大変重要な治療プロセスになります。使用を指示された場合は必ず着用するようにしてください。
交換用のエラスティックをお渡ししますので、食事と歯磨きのときはとりはずし、ご自分で再度装着してください。
モジュール
シリコン製のモジュールを使用してワイヤーをブラケットに取り付けます。
パワーチェーンと同様に、次の来院までに食べ物の色素を吸収して変色することがあります。
パワーチェーン
パワーチェーンは、多数の弾性リングがつながったもので、チェーンのような外観をしています。抜歯したすき間を閉じる、正中を一致させる、歯の回転を治す、などの目的があります。矯正歯科医が装着し患者さんが交換する必要はありません。
衛生状態が悪いとむし歯や歯周病にリスクを高めるので、丁寧はブラッシングを行ってください。
私たちが大好きなカレーライスは、パワーチェーンやモジュールを黄色く変色させます。カレーに含まれるターメリックが原因と考えられています。変色が少しでも気になる方は、カレーを全く食べない、もしくはパワーチェーンを交換する直前に食べるように工夫してください。
歯科矯正用アンカースクリュー
これは小さな金属製のネジで、歯の近くの歯肉に埋め込みます。位置の悪い歯を動かすためのアンカー(固定源)として使います。ミニスクリュー、ミニインプラント、テンポラリーアンカレッジデバイス (TAD) などと呼ばれることもあります。
局所麻酔薬をおこなって、ネジをゆっくりと挿入します。清潔に保っていれば、感染がおこる可能性は非常に低いです。
歯の移動が完了したら、ネジを外します。除去のときは麻酔は必要ありません。歯肉は数日以内に治癒します。
メリット
- 上顎前突(出っ歯さん)などのケースでは確実に治療できる可能性が高まる
- 治療期間が短縮される
- 顎間ゴム(エラスティック)の使用が不要になる、または少なくなる
- 先天欠如などで歯が少ない場合に、奥歯を前に移動して空隙を閉じることができる
- 顎矯正手術なしでガミースマイルの改善ができる
デメリット
- 外科的処置が必要になる
- 数日間腫れや痛みがでる場合がある
- スクリューが緩んで再埋入が必要になることがある
- 歯根が傷つくリスクがある
- 追加費用がかかる
ワイヤー矯正の種類と治療期間は?
一般的に、軽度な症状では1年半から2年半くらい、抜歯治療が必要になる場合は2年〜3年、難易度が高いケースでは3年6ヶ月以上かかる場合もあります。
非抜歯のための付加装置を行う場合は、付加装置の使用期間が6ヶ月〜1年、そのあとワイヤー矯正(マルチブラケット)に変更して、1年6ヶ月〜2年6ヶ月の治療をおこないます。
歯並びの状態によって治療期間は大きく変わってきますので、初診相談でどのくらいの治療期間が必要かを確認すると良いでしょう。
歯並びの症状の程度 | 歯並びの状態 | 治療期間の目安 | 治療プラン |
---|---|---|---|
軽度 |
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1年半〜2年半 | 非抜歯 |
中等度 |
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2年〜3年 2年〜3年6ヶ月 |
|
重度 |
|
2年6ヶ月〜3年6ヶ月 |
|
通院頻度
ワイヤー矯正(マルチブラケット)では、1ヶ月に1回の通院が標準です。
遠方からの方はご相談の上、2ヶ月に1回程度での通院も可能です。
なお装置が装着されるまでは、1〜2週間おきの通院の方が治療開始がスムースです。
開始するのに最適な年齢は?
子供にとってワイヤー矯正が最適なのは10 歳〜 14 歳の間です。この年齢では子供は永久歯がすべて生えそろっていることが多いです。乳歯がほとんど抜けて永久歯の多くが生えていることが必要です。
この年齢の子供はあごの骨がまだ完全に発達していないので、歯が移動しやすいです。また成長発育を利用した装置の使用が効果的になる場合もあります。
しかしできるだけ小学校入学時(6〜7歳頃)に一度初診相談されることをおすすめします。早期に治療を開始することで、今後の治療をシンプルにすることが可能な場合があります。また隠れた不正が見つかることもあります。非抜歯での治療の可能性も高まります。時には簡単な装置のみで治療がほとんど完了し、ワイヤー矯正(マルチブラケット)が不要になる可能性があります。
逆に患者様によっては、ワイヤー矯正(マルチブラケット)を使用するまで、乳歯がぬけるのを数年待つ方もいます。
小中学生の治療
乳歯が抜ける小5〜中1くらいから(10〜13歳)から開始可能です。乳歯が抜ける時期は個人差が大きく中2以降でも残っている場合がありますが、そのようなときはレントゲンで永久歯の位置を確認して、治療スタートすることが多いです。
受け口・反対咬合や上顎前突(出っ歯さん)のケースでは、顎整形力を発揮した治療を1、2年行ってから、ワイヤー矯正(マルチブラケット)に移行する場合もあります。
高校生の治療
ワイヤー矯正(マルチブラケット)に適した時期です。
成人後の患者様よりも歯の骨がやわらなく、移動スピードが早い場合が多いです。
成人後の治療
成人になってからのワイヤー矯正(マルチブラケット)は、歯周組織(歯を支える役割を持つ歯肉や骨)が健康であれば、年齢制限はありません。 60歳、70歳以上の方でも治療は可能です。
アメリカをはじめ海外では10代の若者の矯正治療がスタンダードになっています。 歯並びが悪いまま放置することの方が恥ずかしいという考えが強いようです。
1990年代に私がロサンゼルス留学中の友人を尋ね、友人と現地で働く日本人女性とで、一緒に食事をしたことがあります。彼女たちはアメリカ社会の中で歯並びが悪いことを大変気にしていました。しかし成人になってからワイヤー矯正(当時は金属製のブラケットがアメリカでは主流でした)をつけるのも耐えられないし、どうしたらいいんだろうと大変悩んでいたことを思い出します。
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自分にあった治療法を探せる
ワイヤー矯正は100年近くの歴史と伝統があり、世界中もっとも普及している矯正装置です。あらゆる歯並びに対してさまざまな治療法が検討されており、熟成された治療技術の恩恵を受けることができます。
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効果的に治療できる
むし歯で失われた歯が多かったり先天欠如の歯があって空隙の多い歯並びでは、より効果的に移動することができます。
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安定したペースで治療できる
固定装置が歯に直接ついているため、定期的に矯正歯科に通院することで、安定したペースで治療が進みます。
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他の装置と併用可能
拡大装置やナンスホールディングアーチなどの舌側(歯の裏側)の装置との併用がしやすい。
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トラブルが起きにくい
マウスピース型矯正装置(インビザライン)でのトラブル、例えば患者様がきちんとフィットさせない、つけ忘れる、紛失するなどのリスクがありません。
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治療費が安価
マウスピース型矯正装置(インビザライン)よりも一般的に治療費が安価です。
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歯の脱臼を防ぐ
球技や格闘技などのコンタクトスポーツでお口に強い打撲があるときに、歯の脱臼を防ぐことがあります。
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他院で引き継ぎ、治療ができる
転医する場合も、装置に互換性があるため、他院での引き継ぎがスムーズです。
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矯正中なことが目立つ
マウスピース型矯正装置(インビザライン)と比較して目立ちやすい。
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毎日のケアに時間がかかる
毎日のブラッシングに時間がかかります。ただし時間が経つにつれてより簡単に実行できるようになります。
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食べ物の制限がある
硬すぎる食べ物や粘着性のある食べ物などの制限があります。トウモロコシ、ガム、ソフトキャンディー(グミ、ハイチュウなど)、お餅などは避ける必要があります。
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ワイヤー調整後、食べづらい
より強い力で治療するため、ワイヤー調整後の数日間は炎症や不快感を引き起こすことがあります。
その間は柔らかい食べ物だけを食べることをお勧めします。 -
正しいケアが必要
ブラッシングを正しく行わないと、むし歯や歯肉炎をおこす可能性があります。
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炎症を起こしやすい
ブラケットがお口の中の粘膜を刺激し、粘膜の炎症や口内炎を引き起こすことがあります。
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装置破損の可能性がある
装置の破損があった場合、緊急に来院していただく可能性があります。
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コンタクトスポーツに注意が必要
球技や格闘技などのコンタクトスポーツでお口に強い打撲があると、ブラケットでお口の中の粘膜を傷つけることがあります。
ワイヤーによる歯の圧迫での痛み
装着後3日程度は歯が痛みます。ワイヤーを装着してから2~3時間くらいで痛み始めることが多いようです。これは歯に数十グラム~数百グラムの力が加わり、歯と骨の間の組織が圧迫され、炎症がおきているためです。この痛みは歯が動き始めた証拠ですのでご安心ください。
強い痛みではなく、歯の違和感や歯が浮く感じなる人が多いですが、食事の際には噛むと痛いという症状がでますので、自然と硬いものは避けるようになります。ワイヤーを調整した当日の夜から翌日にかけて、痛みはピークになりますが、3日ほど経つと嘘のように痛みが消え、硬いものを食べても痛くなくなります。数週間後にワイヤーを再度調整するとまた痛み始めます。通常は 2~3か月経つと痛みに慣れて気にならなくなる人が多いです。
痛みの感じ方には個人差があり、一般的に成人の方では痛みが強い場合が多いです。痛みが強い場合は、市販の鎮痛剤を使用することもできます。どんなに痛みが強い方でも、1ヶ月程度あれば慣れていきます。
外側ワイヤー矯正(マルチブラケット)の
口内炎について
装置をつけると、装置のゴツゴツ感があり、唇や頬の裏側がこすれて痛むようになります。装置をつけた直後は気にならなくても、数日~1週間くらいたつと痛むようになる場合もあります。通常1カ月程度あれば、装置のゴツゴツ感もほとんど気にならなくなります。
応急処置のグッズとして、ワックスをお渡ししています。何かのときのために、お守りがわりに自宅に保管しておくとよいでしょう。
また、歯の移動に伴ってワイヤーの端が徐々に後方から出てきたり、装置が壊れたりすることもあります。そのようなときは、電話連絡の上来院していただければ、すぐに処置をして痛みがないようにします。
当院では永久歯を抜かない非抜歯矯正にも取り組んでいます。 非抜歯だから、必ず口元が必ずでるわけではありません。 歯を抜かずに歯を後ろに下げる矯正治療が可能です。
抜歯するメリットもわかるが、心情的に抜歯を受け入れられないという患者様の気持ちも理解いたします。このような患者様には、歯を抜かない治療が与える影響についてきちんと説明し、非抜歯治療をご提案することも可能です。
非抜歯矯正治療 とは?
当院は、非抜歯矯正研究会に所属しており、非抜歯矯正治療の第一人者であるグリーンフィールド医師(Raphael L. Greenfield)のCADテクニック(Coorinate Arch Development)の考えを取り入れた非抜歯矯正治療を行っております。
GMD(グリーンフィールドモーラーディスタライザー)、急速拡大装置、リップバンパーなどの装置を使用し、歯列を横方向や後ろ方向に拡大し、立体的に改善しながら治療を行います。このような治療を行うことで、親知らずを除いた28本の歯を抜歯することなく矯正治療を行うことが可能となります。
GMD装置 とは?
GMD装置は CADテクニック (Coordinated Arch Development)の考えに基づいて、上顎大臼歯の後方移動と、横方向への歯列弓の拡大を同時に行います。上顎大臼歯は4 つのバネによって後方移動され、臼歯を回転させることなく平行移動することが可能になります。
きちんと計画され、完成した歯並びにすれば、抜歯をしたデメリットはほとんどありません
患者さんに合った矯正治療を計画し、その結果として抜歯を行うのではあればご心配はいりません。抜歯をしたすき間は、叢生(デコボコ)を改善したり、上の歯や下の歯が出ているのを下げるために使います。抜歯をするというのは、もともとのあごの大きさに対して、すべての歯を合計した大きさが大き過ぎたということに他なりません。
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少しでも歯が多い方が、歯を失うリスクが少ない?
親知らずを除いた28本のきちんと保存し、歯並びを確立するのが理想ですが、患者さんによっては、あごの大きさが小さかったり、歯の大きさが大きかったりして、歯が入りきらないことがあります。
あごの大きさが足りないのに奥歯の歯を残すと、親知らずのように歯肉に埋まって、ブラッシングなどのお手入れが十分にできない場合もあります。そのような場合には奥歯を失うリスクは高くなります。
※無理に非抜歯治療をすると、第2大臼歯が埋まってしまうことがあります。
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歯の本数が多い方が将来安心では?
抜歯治療の場合は多くは4本の小臼歯を抜歯するので、24本で歯並びを作ります。日本歯科医師会で推奨している8020運動(80歳のときに20本の歯を残す目標)は、年々達成率があがり、昭和62年(1987年)には、80歳で5本程度しか歯が残っていませんでしたが、令和4年(2022年)では、15本以上の歯が残っています。
このデータには矯正治療をしていない人も含まれているため、矯正治療をしている人は一般の人よりも歯を失うリスクが低くなります。矯正治療直後は24本になって、60歳代の平均本数に減りますが、清掃しやすく無理な力がかからない良い歯並びを手に入れているので、その後の歯の減りかたは一般の方よりも少ないと考えられます。
1人平均現在歯数の経年推移
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抜歯をしたら、他の歯も抜けやすくなる?
抜歯したまま放置していれば、両隣の歯に無理な力がかかってダメージが出ることがあります。しかし抜歯したすき間は矯正治療後に完全に閉じているので、他の歯が抜けやすくなるようなことはありません。
抜歯をしたかどうか、一見すると全くわかりません。歯科医師や歯科衛生士が矯正治療後の歯並びを見ても、またレントゲンを撮影しても、抜歯したかどうかを一目で判定するのは難しい問題です。抜歯した部分の歯周組織がダメージを受けているということもありません。歯の数を数える以外に抜歯非抜歯を推定することはできません。それほど抜歯したあとの歯並びは、完成されています。
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抜歯したら、そのすき間は閉じないこともあるの?
きちんと治療完了まで通院していただければ、そのようなことはありません。
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抜歯することで、後になって後悔することがある?
当院では抜歯をする場合は、原則的に非抜歯の治療法と比較した上で診断いたします。そのようなプロセスを経て抜歯治療をするので、後悔することはありません。
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抜歯によるメリット
口元が下がる
E-lineを改善したい場合は、抜歯治療が適している場合があります。
第2大臼歯や第3大臼歯がきちんと生える
非抜歯治療を計画する場合も、8人掛けの長椅子に9人が腰掛けるような治療にならないようにしていますが、無理に非抜歯にすると奥歯が半分歯肉に埋まるなど、お手入ればできない状態になります。
むし歯の歯を抜歯できる
むし歯や神経をとった歯を抜歯するのは私たちが推奨する方法の一つです。植物の間引きは、通常は弱いもの、細いもの、曲がっているなど形の悪いもの抜きとります。歯も同様でできるだけ寿命が短いと推定されるものを抜歯して、歯全体の平均寿命を高めることができます。
治療期間が短縮する
非抜歯のために歯並びを拡大したり、奥歯を後方に移動する作業が不要になるので、ケースによっては治療期間が短縮します。
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抜歯によるリスク
歯の本数が減る、ただし親知らずを保存すれば本数は変わりません
人間の歯は28本が基本で、親知らずが4本ある人は32本の歯があります。抜歯治療の場合は多くは4本の小臼歯を抜歯するので、24本で歯並びを作ります。ただし親知らずを抜歯しないで保存できる場合もあり、その場合は25本〜28本の歯並びになります。小臼歯抜歯ケースでは骨の後方部にスペースが生じるため、親知らずがきちんと生えることも少なくありません。
※ 抜歯した歯を冷凍保存するティースバンク
歯の矯正治療のために抜かれる歯、親知らずなどを、将来歯を失ったときのために抜歯した歯をとっておきたいという場合は、ティースバンクという方法をご案内します。40年間の保管で保管料金は16万円程度です。そのほかに移植の際に20万円程度の費用がかかります。
口元が下がりすぎるリスク
日本人の場合、もともと口元がEラインより出ている人が多いので、やもえず抜歯をした場合でも口元が下がりすぎるケースは少ないです。当院ではVTOという横顔のレントゲンのシミュレーションを作るので、下がりすぎるケースに抜歯治療は適用しません。
心情的に抜歯を受け入れられない
こうした患者様の心情的な理由は重要で、歯を抜かない正当な理由だと思います。そのような患者様には、歯を抜かないことが与える影響についてきちんと説明し、非抜歯治療をご提案することも可能です。
治療期間が長くなるリスク
抜歯は歯列に十分なスペースを確保し、歯を効率よく移動させるための処置です。 しかし、空隙が大きくなるため歯の移動距離が長くなり、ケースによっては、トータルの治療期間が長くなる可能性があります。このようなケースはそもそも抜歯治療が不要だった可能性があります。
抜歯後の一時的な腫れや痛み
抜歯後は一時的に腫れや痛みを感じることがあります。 2〜3日間腫れや痛みがあることは異常ではありません。親知らずを抜く処置でなければ、大きな痛みが続くことは基本的にないでしょう。歯科医院で処方されたお薬を服用し、アルコールや運動を避け、口を清潔に保つことも、腫れを防ぐのに役立ちます。
抜歯への恐怖心やトラウマ
抜歯に対する過度の恐怖心やトラウマがある人もいます。このような心理状態は小児では一般的ですが、成人でも過去の歯科治療中に感じた恐怖や痛みが原因になって、治療に対する恐怖心が強い方がいます。
代替え案としての非抜歯治療を検討する場合もありますが、どうしても抜歯治療が必要な場合は、痛みなく抜歯する方法をご案内しています。
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痛みなく抜歯をしたい人へのオプション(他院での処置)
笑気ガス
ノーズピースを通して吸入されるガスです。 軽いレベルの鎮静が必要な方に適したオプションです。
静脈内鎮静
より歯科治療に不安がある方に行われます。意識を低下させるために、鎮静剤が静脈内に投与されます。呼びかければ応答できる程度の意識は残りますが、非常にリラックスした状態で歯科治療を受けることができます。
全身麻酔
病院の歯科口腔外科では、全身麻酔をして完全に眠った状態で抜歯を行うことが可能です。一度に多くの部位を抜歯できるので治療回数を減らすことができます。埋伏歯抜歯など長時間かかる処置も、不安感なく治療することができます。通常2日〜4日程度の入院となります。
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一般的な抜歯処置の流れ(他院での処置)
抜歯の準備
レントゲン撮影をして歯の状態を確認します。抜歯治療について説明があります。
局所麻酔
歯肉に注射器で麻酔薬を注入します。注射針でチックッと刺しますので小さな痛みがありますが、そのあと痛みは感じません。
抜歯処置
へーベルという器具を用い「てこの原理」を利用し歯を骨から引き離していきます。歯科医が器具で歯を押すため、歯が押された圧迫感がありますが、麻酔が効いているので基本的には痛くはありません。安全に抜歯するために歯科医があごをおさえることもあります。
抜歯後の処置
抜歯したあと止血を行います。必要があれば縫合といって針と糸で縫う場合もあります。麻酔は2~3時間程度効いているので、痛みが心配な方は麻酔が切れる前に痛み止めを飲むと良いでしょう。ガーゼを噛んで30分程度止血して終了します。
当日は長時間の入浴、飲酒、激しい運動などは避けてください。微熱や倦怠感などの症状がでる場合もありますが、ほとんどの人は翌日には通常の生活に戻ることができます。
治癒経過の確認や抜糸処置
消毒のために翌日通院する場合があります。また1週間ほどで糸を取ります。
お口の中をきれいに保つこと
ブラケットのまわりにプラークがたまるのを防ぐために、食事のあとに必ずブラッシングを行ってください。小さな鏡やスマホの自撮りモードを利用して、食べかすが残っていないか確認すると良いでしょう!
毎回のブラッシングが難しい人は、軽くお口をゆすぐ程度で帰宅し、自宅でブラッシングを行ってください。とくに就寝前には、1日の汚れを念入りに取り除いてください。10分以上のブラッシングをお勧めします。
どこでも歯ブラシ!
ブラッシングには歯磨き剤は必要ありません。歯磨き剤を使うと泡がたくさん発生して、清涼感を感じるため、数分間のブラッシングできれいになったと錯覚してしまいます。
歯磨き剤を使わないことで、リビング、食卓、勉強部屋、お風呂などどこでもブラッシングが可能になります。どこでも歯ブラシがお口を清潔にする秘訣です!
エラスティック(着脱式のゴム)を着用してください
エラスティックは、歯を動かすための力を生み出します。矯正力を一定に保つためには、常にゴムを装着し、毎日1回はゴムを交換する必要があります。ゴムを着用しないと治療期間が長くなります。
エラスティックを外すのは食事とブラッシングのみにしましょう。食事のときもエラスティックをつけたままでいると、着脱のわずらわしさもなく、装着時間も伸びるのでおすすめです!慣れると食事をするのもさほど苦になりません。
定期的な通院
定期的な通院は治療成功の重要な鍵です。一般的には4週間に1回の通院ですが、治療初期などは1、2週間おきの通院をすると装置を早く装着できるので、治療開始が早まります。また治療の最終段階や外科矯正の手術前2ヶ月も、2週間おきに通院をお願いすることがあります。こちらも治療を早く終えるために必要な通院です。
治療の最終段階ではよく噛んで食事をしましょう
上下のすき間が閉じたあとの、治療の最終段階では、噛み合わせを緊密にするために、皆さんの咀嚼力を利用することがあります。先生の指示があったら、できるだけよく噛んで食事をするようにしてください。歯科専用キシリトールガムは粘着性が抑えられているので、積極的にかむことでより噛み合わせが安定し、早く装置を除去できるようになる効果があります。
気になることがあったら連絡を
ブラケットが外れたり、ワイヤーがずれて頬にささり痛みがある場合は、歯科用ワックスで覆ってください。そのあと修理の予約が必要かどうかを当院までお電話ください。
歯がグラグラしたように感じてもこれは、正常なことであり、治療が効果を示していることを意味します。
ブラケットや固定器具を手でいじらないこと
矯正装置が気になって、手で触ったりすると装置破損の原因になります。
食べ物に対する配慮
極端に硬いものなどは、ブラケットを破損するおそれがあるので、避けていただくか、小さく刻んでから食べるなど工夫が必要です。
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小さく刻んでから食べたいもの
- かた焼きせんべい
- 硬いステーキ肉
- 氷や「あずきバー」をかじる
- フランスパン
- 生のニンジン・リンゴ
- ほぐしていないトウモロコシ
- するめ
- アーモンド
- 鶏軟骨
- 干し芋
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避けた方が良い粘着性のもの
- ソフトキャンディー(グミ、ハイチュウ、タフィー、キャラメル、ミルキー)
- ガム(歯科専用を除く)
- お餅
※ソフトキャンディはお砂糖も含有量も多く、むし歯の原因になるので、とくに避けるようにしてください。
シュガーレスキャンディーは砂糖が入っていないので、食べても構いません。また歯科専用キシリトールガムなど粘着性が抑えられているので、食べていただいても構いません。 -
矯正装置にはさまりやすいもの
- かた焼きせんべい
- 繊維性食品(ほうれん草、長ネギ、ひじき、もやし、えのき)
- 麺類(そば、うどん、ラーメン、スパゲッティ)
- 白米
- ひき肉
※これらの食べ物は食後にちゃんと歯磨きをすれば問題ありません。